【論文】「勝ち負け」で変動するテストステロンが、人間の攻撃性を左右する

2014年の研究を紹介します。
この論文は、テストステロン(T)と攻撃性の関係を「静的なホルモン量」ではなく、競争によって生じる動的な変化として捉え直した重要なレビューです。

“T concentrations are not static, but rather fluctuate rapidly in the context of competitive interactions, suggesting that acute fluctuations in T may be more relevant for our understanding of the neuroendocrine mechanisms underlying variability in human aggression.”

Social neuroendocrinology of human aggression: examining the role of competition-induced testosterone dynamics

Carré & Olmstead(2014)は、人間の競争・勝敗・社会的地位の変化がテストステロンをどのように変動させ、その結果として攻撃的・支配的行動を引き起こすかをまとめています。
研究によれば、Tのベースライン(もともとの量)と攻撃性の相関は弱い一方、勝負・競争・挑戦などの状況で起こる急なT上昇や下降が、行動変化を直接的に予測することが明らかになりました。

クソニートくん
クソニートくん

つまり?

Murasaki
Murasaki

テストステロンの量は一定ではなく、社会的な文脈(自分の地位や競争の結果など)で動的に変化しうる ということだ。

また著者らは、このT変動が脳内の神経機構(特に扁桃体・前頭前皮質など)に働きかけ、社会的行動や攻撃性を調整する可能性を指摘。
つまり、攻撃性は「ホルモンの量」ではなく、「社会的文脈に応じたテストステロンの動き方」によって決まるというわけです。

本研究は、競争・地位・支配・挑戦といった社会的要因が、どのようにして男性のホルモンと行動を結びつけるのかを解明する――社会神経内分泌学(social neuroendocrinology)という新しい学問領域の方向性を示した重要な論文です。

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