2007年のデイヴィッド・ウェインフォース(David Waynforth)の研究を紹介します。人間の女性もグッピーと同様に「他の女性に選ばれている男性」を高く評価し、しかもパートナーの女性が美人であるほどその効果は増大することが実験的に示されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文タイトル | Mate Choice Copying in Humans |
| 著者 | David Waynforth |
| 掲載誌 | *Human Nature*, Vol. 18, No. 3, pp. 264–271(2007年) |
グッピーで実証された「配偶者選択コピー(Mate-Choice Copying)」は、果たして人間でも起きるのか?——この問いに正面から取り組んだのがウェインフォースの実験です。

実験では、女性被験者に男性の顔写真を提示し、魅力度を評価させました。ただし、写真には2つの条件が設定されていました。条件Aでは男性が1人で写っており、条件Bでは同じ男性が魅力的な女性パートナーと一緒に写っていました。
結果は明快でした。まったく同じ男性の顔であっても、魅力的な女性と一緒に写っているだけで、女性からの魅力評価は有意に上昇しました。しかも、一緒に写っている女性パートナーが美人であればあるほど、その男性の評価はさらに跳ね上がったのです。
さらに重要な追加知見として、恋愛経験が少ない女性ほどこの「コピー行動」が強く出たことが報告されています。これは1993年のグッピー実験(Dugatkin & Godin)で判明した「若くて経験が浅い個体ほど、他のメスの選択をコピーする」という知見と完全に一致しており、種を超えた普遍的なメカニズムである可能性を示唆しています。

過去の研究の知見(グッピーの場合)が、人間でも再現したわけだ。
ウェインフォースはこの行動を、配偶者の品質を直接評価するコスト(時間・リスク・認知的負荷)を避けるための「情報のショートカット(ヒューリスティック)」として解釈しています。つまり、「あの男はモテている → 何か良いものを持っているに違いない」という推論を脳が自動的に行っているのです。
なお、Street et al.(2018, *Scientific Reports*)の追試では、この模倣行動が恋愛に限らず抽象画の評価でも同様に起きることが判明。配偶者選択に特化した進化的適応というよりも、人間の脳に組み込まれた汎用的な社会的同調メカニズムの一部である可能性が指摘されています。