【論文】延命技術の進歩は障害を抱えて生きる期間を世界的に拡大させた

2024年に世界最高峰の医学誌『The Lancet』に公表された、世界204カ国・地域を対象とする「世界疾病負担研究(Global Burden of Disease Study 2021: GBD 2021)」の最新分析を紹介します。

医療技術の進歩による寿命の延伸が、必ずしも「健康な寿命」の延伸と連動せず、障害を抱えて生きる期間(Years Lived with Disability: YLDs)を劇的に拡大させている現実を報告しました。

項目内容
論文タイトルGlobal incidence, prevalence, years lived with disability (YLDs), disability-adjusted life-years (DALYs), and healthy life expectancy (HALE) for 371 diseases and injuries in 204 countries and territories and 811 subnational locations, 1990–2021
著者GBD 2021 Diseases and Injuries Collaborators
掲載誌*The Lancet*(2024年)

研究チームは、1990年から2021年に至る31年間の世界的な疫学・医療データを解析し、371種類の疾患および傷害が健康寿命(HALE)、平均寿命、ならびに障害生存年数(YLDs)に与えた影響を包括的に算出しました。

分析の結果、平均寿命(Lifespan)の延伸スピードに健康寿命(Healthspan)の延伸が追いつかず、世界中で「障害を抱えて生きる年数(YLDs)」が著しく増大していることが判明しました。

急性期の救命医療やリハビリテーションの進歩によって致死率が大幅に低下した結果、かつてなら死亡していた重度疾患患者が命を取り留め、慢性的な機能障害や多疾患併存(Multimorbidity)を抱えたまま高齢期を生き延びる構造が定着したためです。

特に日本を含む超高齢社会においては、平均寿命と健康寿命の乖離が縮小せず、認知症、運動器疾患、老衰などの進行性障害を抱えたまま、長期にわたる要介護・終末期医療に依存する期間が延伸しています。

この研究は、医療やリハビリによる延命の「成功」は、病気の期間を短縮する(疾病の圧縮)のではなく、重度障害を抱えた虚弱高齢者が社会に長期滞留する期間を拡大させている(疾病の拡大)という冷徹なエビデンスを提示しています。

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