1992年のリー・アラン・ダガトキン(Lee Alan Dugatkin)とジャン=ギー・ゴダン(Jean-Guy J. Godin)の研究を紹介します。メスが惹かれるのはオスの外見ではなく、「他のメスに選ばれている」という社会的証明(ソーシャルプルーフ)であることが実験的に示されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文タイトル | Reversal of female mate choice by copying in the guppy (*Poecilia reticulata*) |
| 著者 | Lee Alan Dugatkin, Jean-Guy J. Godin |
| 掲載誌 | Proceedings of the Royal Society of London. Series B: Biological Sciences(1992年) |
進化心理学や行動生態学において、「メスはどのようにしてオスを選ぶのか?」という問いは長年の中心的テーマです。従来は「オスの色が鮮やかなほど遺伝子が優秀→メスはそれを本能的に見抜いて選ぶ」という説が有力でしたが、ダガトキンとゴダンは「他のメスの選択を観察して模倣する」という別のメカニズムに着目しました。

実験はトリニダード産のグッピー(*Poecilia reticulata*)を使って行われました。まず焦点メス(Focal Female)に2匹のオスを提示し、どちらのオスを好むかの初期選好を確認します。
次に、モデルメス(Model Female)を、焦点メスが選ばなかった方のオス(=非選好オス)の近くに配置し、「このオスと交流している(=このオスを選んでいる)」場面を焦点メスに観察させます。
その後、再び焦点メスに2匹のオスから自由に選ばせたところ——焦点メスの大半が、最初の選好を覆して「モデルメスが選んでいた方のオス」を好むようになった(選好の逆転)。つまり、メスは「他のメスが選んでいるオス」を模倣して好きになるというMate-Choice Copying(配偶者選択コピー)が実験的に実証されたのです。

この研究は、メスはオスの外見ではなく「他のメスの評価に引きずられる」ことを表している。
なお、1993年の続報(Dugatkin & Godin, *Behavioral Ecology*)では、この模倣行動が年齢(経験値)に依存することも判明。若くて経験が少ないメスほど他のメスの選択をコピーしやすく、年配で経験豊富なメスは自分の判断を変えにくいことが示されています。